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表彰式・記念講演会について

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第24回(2020年度)受賞作品

第24回(2020年度) 「国際開発研究 大来賞」(おおきた賞)は下記作品の受賞に決定しました。
多くの皆さまより ご推薦・応募 参加をいただき、ありがとうございました。

この受賞を祝し、表彰式・記念講演会を開催いたしました。(Zoomによるオンライン配信)
多くの皆さまのご参加をありがとうございました。


表彰式・記念講演会用資料
1.【 受賞作品紹介リーフレット 】
(4枚)
2. 式 次 第 (2枚)
3. 記念講演会 レジュメ (1枚)
 
    本事業には、公益財団法人 三井住友銀行国際協力財団より助成を受けています。

日時 2021年1月13日(水)10:00-12:00

講演 「国家形成過程として「平和構築」を考える
-ミンダナオの紛争・暴力・平和の事例から何を学ぶのか?」 谷口 美代子
なぜ、リベラル平和構築論に基軸した平和構築活動が失敗に終わるのか? 現在、世界各地で発生している紛争・暴力は、新型コロナウィルス感染症パンデミックもあいまってさらに混迷を深めています。本講演では、歴史的経緯を踏まえ、分離独立紛争とその陰に隠れた実態を明らかにし、現地社会の視点から平和構築のあり方を提起した、著書『平和構築を支援する ミンダナオ紛争と和平への道』をもとに、ミンダナオ和平の行方とともに、今後の平和構築に関する研究や実務への知の応用を考えます。

参加無料・要申込  

【締切りました】定員を超える多くの皆さまからお申込みを頂き
        ありがとうございました。

  

受賞者の言葉  谷口 美代子

 この度は、国際開発で多大な功績を残された大来佐武郎氏を称え、その発展を目的とした学術賞を賜れることになり、深い感銘を受けております。そして、コロナ禍にあって厳しい状況の中、選考くださった審査員の先生方、並びにこの研究を支えてくださった皆様、そして名古屋大学出版会の編集者の方々に心よりお礼と感謝を申し上げます。

 本書は、冷戦後に優勢だったリベラル平和構築論に基づくその活動が、なぜ失敗に終わるのかを、ミンダナオの事例を基に現地社会の視点から解き明かしたものです。その特徴は、開発現場から生まれた多くの疑問(謎)を手掛かりに、長期間にわたる現地調査と文献調査を基に分離独立紛争とその陰に隠れた実態を明らかにし、現地社会の視点をふまえた平和構築のあり方を提起したことにあります。

 その中心的な疑問とは、「なぜ、国家からの分離独立を希求する(ムスリムを中心とした自己規定による)「モロ」の氏族同士が、日常的に殺しあっているのか」というものです。このような矛盾した事象が重なり合うことは、世界各地での紛争影響地域でよく観察される現象です。そこで痛感したのは、この問題が、「国家 対 反政府武装勢力」という単純な対立構造だけでは説明しきれないということでした。そこで、「実務者として、無自覚のうちに、特定の有力者の権力を拡大したり、社会的緊張感を高めたりしていないのか。新たな紛争の火種になっていないのか」という道義的責任を痛感し、実務に役立てるために学術研究を開始しました。

 当初、現地調査は治安の制約や現地社会の排他性・政治性などにより、想定した以上に難航しました。多層的な政治秩序が交差する紛争影響地域では、人びとは身を守るために本音を語ることは少なく、国軍(私服)の護衛をつけた開発支援の一環としての聞き取り調査にはおのずと限界があります。そこで、一学生として現地の研究所に所属し、護衛なしで現地調査を開始しました。その多くは形式的ものではく、人々との日常的なかかわりの中で得られたものです。こうして事実を積み上げ、それらを多面的・多層的に検証することによって、徐々に人々の心情や論理、矛盾する事象を理解することができるようになりました。

 本書の前半はこの地域の統治の歴史を長期的な国家形成過程として詳述しています。それは、世界各地で発生する民族紛争が植民地以前の基層社会の政治秩序と支配形態、植民地期の支配形態と民族主義運動、独立後の政府の政策などが複雑に絡み合って発生しているためです。こうして歴史的変遷をたどることで、これまで十分に説明されてこなかった分離独立紛争とクラン間抗争との関係、さらには国家とクランとイスラーム系反政府勢力の関係と紛争の構造的要因を解明しました。

 このような可視化されにくい人的・社会的ネットワークに依拠した慣習的な政治実態に着目して紛争・暴力・平和を論じるという視角は、ミンダナオだけでなく脱植民地国家で発生する紛争や暴力の構造的要因を理解するのに有用です。また、このことは、実務者(外部者)が効果的な平和構築支援を行うだけでなく、無自覚に地域社会に負の影響を与えないためにも重要です。

 今回の本賞受賞は、研究と実務を架橋することの重要性を改めて提起いただくものと受け止めております。こうした地道な研究に光を当ててくださいました選考委員の皆様方に改めて感謝の意を表します。大来賞の名に恥じぬよう、今後より一層精進して参ります。
 

執筆者略歴

谷口 美代子 (たにぐち みよこ)
広島県出身。東京大学大学院総合文化研究所博士課程修了。博士(国際貢献)。現在、(独)国際協力機構、国際協力専門員(平和構築)。
1990年代後半より、国連機関、JICA、NGOなどを通じて開発協力(平和構築)に従事。長年、開発実務を通して得た知見を学術研究として
体系的な知に転換し、実践と研究の両者を架橋することで新たな知識形成を図ることに注力。アジア太平洋研究賞(井植記念賞)、
第32回アジア・太平洋賞特別賞、国際開発学会奨励賞を受賞。


主要著書
“Rethinking ‘Liberal Peacebuilding’: Conflict, Violence, and Peace in Mindanao.” Social Transformations: Journal of the Global South, 7 (1) 2020、“JICA’s Assistance for the forcibly Displaced in Conflict-Affected Countries in Middle East,” (eds) Dunar, Merthan, Exchange of Experiences for the Future: Japanese and Turkish Humanitarian Aid & Support Activities in Conflict Zone, Ankara University Asia-Pacific Research Center, (2018)、“From Rebels to Rulers: The Challenges of the Bangsamoro Government in Mindanao.” The Diplomat (2020) など。
 

これまでの表彰式・記念講演


第23回(2019年度)
第22回(2018年度)
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第20回(2016年度)

第19回(2015年度)
第18回(2014年度)
第17回(2013年度)
第16回(2012年度)
 
OKITA Memorial Prize for International Development Research

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